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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)279号 判決 1956年10月30日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人布山富章、同松本英夫の上告理由第一点乃至第三点について。

原判決が、昭和二一年勅令三八九号戦災都市に於ける建築物の制限に関する件(昭和二四年一一月一日政令三六〇号により戦災復興土地区劃整理施行地区内建築制限令と改称)による仮設建築物の建築の許可は、罹災都市借地借家臨時処理法二条一項但書後段にいわゆる建物を築造するについての許可に当らない旨を判示していること所論のとおりであるが、前記勅令による地方長官の許可がある以上、右許可が仮設建築物についてのものであると否とにより、前記処理法二条一項但書の解釈適用上その取扱を異にすべき謂れがないものと解するを相当とする。しかし原判文によれば、原審は、所論の建築許可が、前記勅令による仮設建築物の許可に該当するものとして上告人等の借地権譲渡の申出の効力を否定したものではなく、前記勅令による地方長官の建築許可があつたことを認めるべき証拠がないことを根拠とするものであると認められるから、畢竟前記原判示は無用の説示に帰し、右は結局において原判決の結論を左右しない。

そして原判決が第二点所論の丙第六号証、同第一三号証につき、前記勅令による地方長官の許可書と認められない旨を判示し、又第三点所論の丙第八号証につき、その他上告人等が地方長官の許可を得たことを認めるに足る証拠は存しない旨を判示する部分につき、違法の廉は認め難いから、この点に関する所論は結局、原審における証拠の採否事実認定を非難するに帰し採用することができない。

第三点のその他の所論は、原審において主張しない事実を前提とするものであるから排斥を免れない。

同第四点について。

所論は違憲の文字を使用するが、罹災都市借地借家臨時処理法二条の解釈に関する原判示の違法を主張するに帰し、違憲の主張には当らない。所論は結局原審における事実認定を非難するに帰する。

なお、上告人等から上告理由補充書、上申書と題する各書面の提出があるが、何れも、上告理由書提出期間経過後の提出にかかるものであるから、右については判断をしない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三)

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